先生ブログ 園生活情報 スケジュール

クライミングはのぼることをたのしんだり、
お友だちときょうそうできるあそびです。
そしてのぼることによってしっかりした体になります。
みなさん、がんばってゴールをめざしましょう。

東 秀磯

学園創立40周年事業のストーリー

Story Of The 40th Anniversary Project

2016年、学園が創立40周年を迎えます。


その年の春に卒園して小学校へと巣立っていった子供をもつ


あるお母さんの思いが種となり、


その種はそのまま幼稚園に留まって、2016年の夏に花を咲かせました

文部科学省では、長年にわたり子どもたちの体力を客観的に測定し、その変遷を捉え続けています。以前より語られてきた「子どもの体力低下」ですが、文部科学省が行ってきた体力測定にもその結果が表れています。 私が幼少の頃を過ごした昭和50年代、街にはいたるところに「空き地」がありました。空き地では年齢の上下なくどこからともなく子どもたちが集まって遊びに興じたり、今よりはるかに安全な街を日が暮れるまで走りまわったりして過ごしました。

(木の実幼稚園向けの設計企画書)

平成に入りもうじき30 年という時間が経ちます。「空き地」という場所を見かけることはなくなり、「空き地」の概念すら消えつつある世代になりました。そして、公園に集まった子どもたちがゲーム機を突き合わせて時間を過ごす様子を見かけるようになりました。彼らは互いに目を合わせることはなく、身体を動かすこともありません。十分に育まれていたはずの体力が徐々に低下するだけの理由が、今の子どもたちの日常にはあるのです。そんな街の景色を見続けていたお母さんは園長と語り合い、「学校にできること」を探し出しました。それが、クライミングウォールだったのです。

そのお母さんと園長が資料を携えてクライミングウォールの話を私のところにしに来た時、私は了承しませんでした。「できなかった」というのが正確なところでした。その理由を簡単に言うと、クライミングが子どもたちの成長において大きな可能性を秘めていることを直感できるものの、私はクライミングの魅力を知らない人間でしたし、そもそもクライミング自体が大変危険なのではないかという先入観がありました。それに加え、多額の投資を必要とする教具を導入することに、私は自信がありませんでした。

そこで、一つ一つ順番にあたって、
すべてクリアできるならチャレンジしてみようと考えました。

まず近隣のクライミングジムを探し、体験に出かけました。とにかく自分でクライミングをしてみないうちは、誰かから「いい」と言われても心から納得しないと思ったのです。クライミング用のレンタルシューズに履き替え、「ホールド」と呼ばれる手足をかける突起物をつかみ、壁の上を向いた瞬間、なにか日常のあれこれが消し飛び、目印の打たれたゴールまでのルートを必死に目と頭と体で追っていました。人のDNA には、「ちょっと高いところに登ろうとする」なにかの情報が組み込まれているのだと思います。20~30 分程でしょうか、夢中でアタックを繰り返しました。そのうち握力がとんでしまい、特に肘から指先にかけてプルプルと震えるような感触があり、普段使えていない体 の一部を使うことができたことに気がつきました。帰りの車の中で、「クライミングウォールが幼稚園のホールに出現したら、子どもたちはどんな顔をするだろうか?」とワクワクしていました。もうこの時には、私の心は決まっていたのだと思います。

(愛媛クライミングジムiTTE にて)

(福井県で製作された部材が運び込まれました。
写真は子どもたちを守るクッションマット。)

次にリスク(危険)の程度について、実際にクライミングをしている人、教えている人、開発者、様々な立場の人に意見を聞いて回ったのですが、みなさん「そもそもクライミングは他のスポーツと比べ事故や怪我が少ない競技です。」という共通の認識をもっていました。少しキョトンとしたのですが、よく考えると確かにラグビーやサッカーのようなフィジカルコンタクトがなく、野球のように硬球が体にあたるような危険性がありません。そして、「幼児については致命的な事故があったという話を聞いたことが無い。」とのことでした。
おそらくは、そもそも地面から離れたところにいる時点で「落ちる」ことがあり、滑り台やジャングルジムと異なり自分の体を支えているのが物体ではなく自分の体の一部であるため、競技中は「落ちないように」という意識が常に強く働き、例え落ちても十分な面積が確保された競技用クッションが体を守ってくれるからなのだと思います。先入観で頭がいっぱいになっていたことにハッとさせられました。

最後にこの事業をどう結実するか。これは、幼稚園だけではどうにもなりませんでした。かねてよりクライミングウォールが子どもの養育に高い効能があることを知って開発を手掛けていた教具・遊具メーカーさん、そして、長年にわたり地域の学校教育を支え続けて下さっている金融機関さんが「やりましょう!」と導入できる段取りを考案くださり、そして保護者会からの援助を頂くことで道筋がたったのでした。

(事業関係者による現場の最終確認の様子)

(教職員研修の様子)

メーカーさんの調べによると、幼児教育に体育的要素としてのトラバース・クライミングを取り入れている園は、日本でもあまり例がないそうです。そのため、明快な手本というものがありません。つまり、我々教職員にとっても新たな挑戦です。そこで、日本人初の「国際ルート・セッター」であり、国体や国際大会でもクライミングのルート監修を手掛ける「東秀礎(ひがしひでき)」先生を招き、教職員で講義を受けました。これからどのような工夫を凝らせるのか、我々は子どもたちと探していきます。

種を蒔こうとしたお母さんと園長。特に、このお母さんは卒園した自分の子どもが園のクライミングウォールを使うことは無いので、本来は個人的にはなんの魅力もメリットもないのです。それでも、わが子が育った場所の環境づくりに時間と労力を割かれました。未来の街に「姿を変えた空き地」を作っていくのは、こうした「子どもを慈しむ母心」なのかもしれません。。

(写真左:筆者、写真中央:東先生、 写真右:発起人のお母様)

さぁ、次の40年で
世界はどう変わってゆくのでしょうか。

クライミングウォールについて

Climbing Wall

事業協力関係者およびスペシャルリンク

Business Collaborators

事業協力者

愛媛銀行様

ジャクエツ様

スペシャルリンク

愛媛クライミングジムiTTE様

イボルブジャパン様

Project Supervisor

中矢コノミ、木下洋子

Project Manager

ジャクエツ

Route Setter

東秀磯

Finance Advisor

愛媛銀行

Personnel Organizer & Website Designer

アンデュウトロワ / 無双社

Movie Shooter

バンブーデザイン